フィリピンの自然化粧品メーカー「ヒューマンネイチャー」とは

自然な原材料だけで作られた化粧品やシャンプー類を販売しているフィリピンのメーカー「ヒューマンネイチャー」が興味深いです。フィリピンでは25以上の支店を持つほか、ほぼすべてのスーパーやドラッグストアで製品が販売されています。どんな会社なのかご紹介します。

あわせて読みたい
ヒューマンネイチャー(オーガニック製品メーカー)おすすめ商品 アラフィフの女性です。フィリピンで育つ植物を活用した商品を数多く作っているフィリピンの会社「ヒューマンネイチャー」。良い商品が多いので、使い心地を紹介します...
目次

ヒューマンネイチャーとは

ヒューマンネイチャーで販売している商品

ヒューマンネイチャーは自然由来の原材料のみを使い、使い心地よく、手ごろな価格の製品を販売しています。販売する商品は多岐にわたります。

  • 化粧品 
    メイクアップ、基礎化粧品、クレンジング、アンチエイジング製品など。
  • ヘア製品
    シャンプー、リンス、ヘアオイル、ヘアスタイリング剤など。
  • ボディ用製品
    固形・液体せっけん、ボディーシャンプー、洗顔せっけん、ハンドソープなど。日本ではあまり見かけない女性プライベートゾーン用のせっけんも豊富です。
  • パーソナルケア製品
    歯磨き粉、日焼け止め、デオドラント製品など。
  • 子供用品・男性用品
    からみを抑えた歯磨き粉など子どもに向けたもの。
    ひげそりクリーム、シャンプーとボディ兼用せっけんなど主に男性向けのもの。
  • ペット製品
    ペット用のシャンプーと、毛の調子を整えるオイル。
  • シトロネラ製品
    虫よけに効果のあるシトロネラオイル使用した製品。虫よけオイルやローションなど。
  • 洗剤
    食器用、洗濯用など。
  • 飲食品
    ココア、クッキーなど。
  • その他
    消毒、エッセンシャルオイル(アロマオイル)など。

有害な化学物質を一切使用していません。
商品が確認できる公式サイト(英語)もぜひご覧ください。

ヒューマンネイチャーの哲学

ヒューマンネイチャーは3つの理念をもとに運営されています。

  • 貧困層に対する愛(Pro-poor)
  • 環境に対する愛(Pro-environment)
  • フィリピンに対する愛(Pro-Philippines)

フィリピンの農民の多くは、貧しい暮らしを強いられています。
ヒューマンネイチャーは、価値の高いエッセンシャルオイルや、フィリピンの植物を原材料にした化粧品などの製品の需要を生み出すことで、農民の生活を改善しようしています。

農家の生産量と生活の質を向上させるために、スキルトレーニング、価値観の教育、インフラ作りにも力を入れています。

また、ヒューマンネイチャーの従業員の多くは以前は三輪車(自転車やバイクに乗車席をつけた簡易タクシー)の運転手、ゴミ収集業者、清掃員など、請負業者でした。現在はヒューマンネイチャーでフルタイムの従業員として、福利厚生を備えた倉庫作業員、マーチャンダイザー、事務員として働いています。

ヒューマンネイチャーの人事制度に下記の特徴があります。

  • フィリピンの労働法で義務付けられている最低賃金を 60% から 100% 上回る公正な生活賃金を提供しています。
  • 緊急の場合に備えて「無利子」の個人融資を提供します。
  • コーチングを通じて、財務管理の方法、ワークライフバランスの維持方法、家族との時間の管理方法などのライフスキルを提供します。
  • 正社員には解雇制度はありません。同社は従業員に制裁を課すことになるが、その目的は従業員の行動とスキルセットをさらに向上させることだ。

ヒューマンネイチャーの女性創設者アンナ・メロト・ウィルクさん

ヒューマンネイチャーを始めたのは、フィリピン人の女性アンナ メロト ウィルクさん(1979年生まれ)です。

ヒューマンネイチャーの商品を前にアンナ メロト ウィルクさん 引用元

きっかけ

アンナさんは、アメリカで人気のある製品に含まれる成分(ココナッツ、エレミ、サトウキビ、アロエ)の多くが、フィリピンで豊富に栽培されている熱帯植物に由来することに気づきました。

そこで、イギリス人の夫と実妹と共に研究を始め、専門家の協力を得て、フィリピンの貧しいコミュニティに貢献する高品質のオーガニック製品を生産するビジネスを生み出しました。

アンナさんの父親トニーさん

アンナさんの父親は、フィリピンの貧困緩和と国家建設運動を行う市民企業「ガワド・カリンガ」の創設者として世界的に有名なアントニオ・トニー・メロトさん(トニーさん)です。

彼はその実績から数々の賞を受賞しており、日本でも、日本経済新聞社による第16回日経アジア賞「経済発展部門」(2011年)を受賞しています。「低所得者層の住環境の改善に尽力。約2,000の地区に20万軒の住宅 を建設するなど住民の生活向上に努めた」と評価されました。

日経アジア賞は、日本経済新聞社の創立120年を記念して設立された賞である。

経済発展部門、科学技術部門および文化部門の3部門が存在した。日本を除くアジアの個人および団体が対象となり、表彰のほか副賞として賞金300万円が授与された。

Wikipedia
第16回日経アジア賞授賞式の様子。中央がアントニオ・トニー・メロトさん

アンナさんの生い立ち

アンナさんが父親から継いだ精神

トニーさんは、自分が持っているものを最大限に活用する方でした。この点をアンナさんは受け継いでいます。

アンナさん「父は、個人的な興味を超えて、より有意義な人生を常に送りたいという願望を私に刻み込んだようなものでした。父は、一人一人を平等にみなし、尊厳と敬意を持って接するように私たちを育てました。」

トニーさんは、犯罪者の訓練場として悪名高い場所で、ギャングや麻薬中毒者に手を差し伸べるために、対象となる若者の合宿場を作りました。危険な場所ですが、そこに娘のアンナさんを連れて行ったそうです。

アンナさん「私をそこに連れていくのは、危険であると同時に、平和を象徴する捧げものでもありました。娘を愛するのと同じように、周囲に見放された若者たちを家族の一員と見なしていることを示すためでした」

アンナさんの夫はイギリスで成功した起業家

アンナさんは、トニーさんの活動を通して、後に夫となるディラン・ウィルクさんと出会います。

ディランさんはイギリス人で、貧しい家庭出身です。しかし、20 歳で始めたコンピューターゲームビジネスが成功し、ロンドン証券取引所に上場。当時、英国上場企業の最年少取締役となりました。

一躍大富豪となり、フェラーリ、ポルシェ、数台の BMW を自分で購入し、ヘリコプターで通勤したそうです。ただ、そんな生活にもかかわらず、彼は幸せを感じられませんでした。

人生において意味のあるものを探して世界を旅する中で、アンナさんの父親トニーさんが運営するフィリピンの市民活動を知り、アンナさんと出会い、2004 年に結婚します。

アメリカで得たヒント

2007 年、アンナさんとディランさんは、アメリカのスーパーマーケットで、自然と体に優しいオーガニック製品が、手頃な価格で販売されていると気付きました。

それら人気のある美容やパーソナルケア製品の原材料(ココナッツ、エレミ、サトウキビ、アロエ)は、フィリピンで豊富に栽培されている熱帯植物であることから創業アイデアを得ます。

フィリピンの田舎の農民が、田植えに依存するのではなく、持続可能でより生産的な仕事を持つのに役立つとひらめいたのです。

そこで、アンナさんの妹カミーユさんも加わった3人で、2008 年にヒューマンネイチャーを始めました。

写真は創設メンバーの3人で、社長アンナさん(ジャケット)、夫のディランさん、アンナさんの妹のカミーユさん(水玉)です。

ヒューマンネイチャーの受賞歴


ヒューマンネイチャーは取り組みの素晴らしさでいくつもの賞を受賞しています。

動物の倫理的扱いを求める人々の会


the People for the Ethical Treatment of Animals (PETA)は、「動物の倫理的扱いを求める人々の会」と訳せます。世界最大の動物愛護団体です。

PETAはヒューマンネイチャーに、生き物に対して残酷なことをしていないとお墨付きを与えました。

  • 動物実験は行っていない。
  • 口紅にはカルミン(=コチニール色素)を使用していない。
    コチニール色素は、鮮やかな赤と明るいピンク色に使用されるメスのコチニール昆虫の体を粉砕して作られた一般的な化粧品成分です。(ウィキペディア英語
  • 人間に良いだけでなく、動物にも残酷ではない製品を生産している。

サステナブル ビューティー アワード


ヒューマンネイチャーは、アジアのブランドとして初めて、権威あるサステナブル ビューティー アワード(Sustainable Beauty Awards)のパイオニア賞を受賞しました(2016 年 10 月)。
設立してまだ8年目の時でした。

サスティナブル ビューティー アワードは、グローバルな倫理的製品や産業に焦点を当てた専門調査等であるEcovia Intelligence (旧名Organic Monitor)(イギリス)によって与えられます。

賞の目的は 、美容業界でサステナビリティの境界を押し広げている組織を表彰することです。
注目すべきコンテストには、毎年何百ものエントリーが集まると言われています。

サステナブル ビューティー アワードの 5 つの賞カテゴリをヒューマンネイチャーにあてはめてみました

  • 新しい持続可能な製品
    ヒューマンネイチャーの場合、石鹸やシャンプー、化粧品や芳香剤などを全て自然の材料を吟味し、世界基準で、バラエティに富んで製造しています。
  • 持続可能な原材料
    ヒューマンネイチャーの場合、商品の材料となる作物を管理して育てていることや、地元の生産者に対する教育が該当します。
  • 持続可能なパッケージング
    皆様はシャンプーバー(固形シャンプー)を試しましたか?
    プラスチックケースに入っていないシャンプーです。
    ヒューマンネイチャーの梱包は利便性だけではなく環境面も意識しています。
  • 持続可能な開拓者
    発展途上国であるフィリピンはせいぜい原材料を先進国に輸出するぐらいでした。
    そこで、ヒューマンネイチャーは自分たちでミッションを打ち立て、製造や販売も効率的に行っています。フィリピンにおいてはまさに開拓者。パイオニア賞を受賞したのも納得です。
  • 持続可能なリーダーシップ
    ヒューマンネイチャーは有言実行で自社の方向性を言葉にし、関係者が、ぶれないようにしています。

ナチュラル プロダクツ アソシエーション


ヒューマン ネイチャーは、ナチュラル プロダクツ アソシエーション the Natural Products Association (NPA) のメンバーです。
NPA は米国で最大かつ最古の非営利団体です。自然な製造を進め、消費者の健康や環境保護に専念しています。

NPA シールは、天然成分、安全性、責任、持続可能性に関するパーソナルケア製品の NPA 基準への準拠を証明します。このシールは、次の厳しい基準をクリアした製品に与えられます。

NPAの基準
  • この製品は、水を除いた部分で、少なくとも 95% が天然成分で作られています。
  • 成分は自然界にある再生可能な資源から作られています。これらは、環境に害を与えることなく処理されうるものです。
  • どの成分も人間の健康にリスクをもたらすことはありません。これは第三者の科学文献で査読されています。
  • 製品は動物でテストしていません
  • ラベルにすべての成分を必ず記載しています。

ところで、最近の商品にはNPAシールが貼られていない事に気づき、2022年10月にヒューマンネイチャー社に問い合わせました。
NPA側のルール変更により、新しい製品の認証や、2年間の認証が期限切れになった製品の認証更新は行われていないそうです。でも、今も引き続き、NPA 基準に沿って製造しているとのことでした。

合成化学物質の代替成分

一般の化粧品やパーソナルケア製品には、体に悪い化学成分が多々含まれています。
我々は、毎日の暮らしで避けるべき化学成分と、その影響について知っておくべきでしょう。
化学成分の悪影響は、一般に我々が思っているより、深刻に長く続きます。

ヒューマンネイチャーの製品は、合成化学物質を自然成分に置き換えることで、危険を回避しています。

続く項目は下記で色分けしています。

  • 合成化学物質名(青)
  • 悪影響(赤)
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品(緑)

界面活性剤

  • 合成化学物質名
    SLS/SLES(ラウリル硫酸ナトリウム・ラウレス硫酸ナトリウム)、ALS/ALES(ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム)
  • 悪影響
    皮膚にダメージを与え、発がん性物質が浸透しやすくなる
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    ココイルイセチオン酸ナトリウム(ココナッツオイル由来)、デシルグルコシド(ココナッツ由来)

防腐剤

  • 合成化学物質名
    パラベン、BHA/BHT、DMDMヒダントイン、フェノキシエタノール、TEA(トリエタノールアミン)
  • 悪影響
    がんや腫瘍を引き起こす可能性があり、免疫系を弱め、アレルギー性や刺激性があり、早期老化を引き起こす可能性がある。
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    ローズマリーエッセンシャルオイル、グルコノラクトン(トウモロコシ由来)、カプリル酸グリセリル(ココ、パーム、グリセリン由来)

保湿剤

  • 合成化学物質名
    鉱物油、ジメチコン、ワセリン、パラフィン
  • 悪影響
    皮膚をプラスチックのようにコーティングして毛穴を詰まらせ、皮膚の機能と細胞の発達を遅らせ、皮膚の老化を早める。
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    ココアバター、バージン ココナッツ オイル、ヒマワリ油、アボカド油、パッション フルーツ油、ヒマシ油

香り

  • 合成化学物質名
    合成香料、フタル酸エステル類
  • 悪影響
    肝臓と生殖器の損傷リスクがある。
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    エッセンシャルオイル、天然フレグランスオイル

抗菌

  • 合成化学物質名
    トリクロサン
  • 悪影響
    内分泌(ホルモンの異常により生じる病気)および生殖機能障害のリスクがある。
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    アカプルコエキス、サトウキビアルコール、キトサン

着色剤

  • 合成化学物質名
    レーキ染料、FD&C カラー、カルミン (口紅の天然着色料ですが、砕いたコチニール昆虫から作られており、動物虐待といえる)
  • 悪影響
    神経毒性、発がん性の可能性
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    鉱物酸化物

乳化剤

  • 合成化学物質名
    DEA(ジエタノールアミン)
  • 悪影響
    ホルモンに影響を与える
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    ステアリルアルコール、セチルアルコール(全て植物由来)

溶媒

  • 合成化学物質名
    プロピレングリコール
  • 悪影響
    肝臓と腎臓の損傷リスクがある。
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    植物性グリセリン、水

虫除け添加剤

  • 合成化学物質名
    ディート
  • 悪影響
    変性疾患、先天性疾患を促進してしまう
  • ヒューマンネイチャーによる自然な代替品
    シトロネラ、レモングラス、ラベンダー、ローズマリーのエッセンシャル オイル

終わりに

私はヒューマンネイチャーについて、商品だけではなく、ミッションやこれまでの過程すべてに興味を惹かれ、当社のファンになりました。
ヒューマンネイチャーに関してお伝えしたいことはまだまだありますので、随時更新したいと思います。

目次