子供を英語と日本語のバイリンガルに育てるために必要なこと

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英語圏で生活しても、子どもは自然にはバイリンガルに育たない

2014年、私は子供3人と夫と共に、子どもたちに英語で教育を受けさせるためにセブ島(フィリピン)に移住しました。直前は、移住準備をしながら、バイリンガル教育に関する情報を集めていました。

そして目にしたのが、市川力氏の本「英語を子どもに教えるな」です

親の仕事で英語圏に滞在する日本人のお子さんについて、「結局、英語もうまく使えるようにはならず、日本語も中途半端なまま日本に帰国」する例が多いと書かれています。

ショックでした。英語圏・セブ島で生活しても、子どもは自然にはバイリンガルには育たず、むしろ両言語とも心もとなくなりそうです。海外移住が子どものバイリンガルを保証しないとは知りませんでした。

英語圏で暮らす母親の体験談によれば、子どもは漢字を覚えず、ひらがな、カタカナも怪しくなり、やがて英単語交じりの会話がやっとになってきます。親が子どもに日本語を学習させようとすると子どもは嫌がり、無理強いすれば、日本語学習に対する嫌悪感が強まります。といって、なにもせずに放っておくと、子どもの日本語力は落ちる一方だそうです。

セミリンガルになるリスクについて

比較的低年齢から英語圏に行っていても、英語力の伸びが芳しくない場合や、日本でもあまり読書習慣が無く、豊かな日本語体験があったと言えない場合は、「セミリンガル(=ダブル・リミテッド)」になる可能性が高まります。セミリンガルとは、日本語も英語も年齢レベルに達していないこと、つまり「二言語とも不十分な状態」です。

セミリンガルになった我が子を想像してみました。そのまま成長したら、日本語でも英語でも、難しい文章を読めない、読まない大人になるでしょう。私たち日本人は、情報を得たり疑問を解決したりする時に日本語のサイトや文献を活用しますが、セミリンガルなら、どの言語の情報も難しいはずです。また、文章は「読む」より「作る(書く・話す)」ほうが高度なため、自分の考えや知識を言葉で発信することはさらに苦手となるでしょう。

つまり、文字情報や他者との言語コミュニケーションから知識や情報を学び、それを自分なりに消化し、他者と共有することができなくなります。

「考えをうまく伝えられなくてイライラするんじゃないかしら。人と関わることを諦めて、ひきこもるんじゃないかしら」と心配になりました。これではなんだか、このまま日本にいて、日本語に長けた大人に育てるほうがよほど良いかもしれません。

バイリンガルをあきらめないなら取るべき方法

でも、市川氏の次の記述を見て、私は覚悟を決めました。

(日本で)「子どもの時から英語を教えるからには、親自身も高い英語力を持ち、でき得る限りフォローする覚悟が必要だし、費用も非常にかかる。中途半端に行うなら、絶対に止めたほうがいい」。

英語を子どもに教えるな (中公新書ラクレ)

この市川氏の言葉は、日本で、子どもの英語力を気にしながら子育てしている保護者にはとても厳しいものです。でも市川氏の本書を読むと、それが現実だと納得せざるを得ません。つまり、バイリンガル教育は、日本においてはあきらめなくてはならないということです。

しかし、英語圏に移住して行なうバイリンガル教育なら、この厳しい言葉を次のように言い換えられると私は気づきました。

(英語圏で)子どもの時から「日本語」を教えるからには、親自身も高い「日本語力」を持ち、できうる限りフォローする覚悟が必要だし、費用も非常にかかる。中途半端に行うなら、絶対に止めたほうがいい。

言い換えても厳しいことに変わりません。でも日本人保護者なら、高い日本語力を持っています。英語圏で暮らしながら、この日本語力で自分の子どもに話しかけ、子どもにも日本語で話させ、日本語の本を読ませたり、日本人と継続して触れあわせることは可能でしょう。

もちろん、それを甘く見てはならないと自戒します。

ただ少なくとも、高い英語力を持たない我々保護者が、日本に居ながら子どもに英語だけで話しかけ、子どもにも英語で答えさせ、かつ英語しか通じない外国人と触れ合わせるのは不可能です

英語圏に暮らしながら子どもに日本語のシャワーを浴びせるしか、道は残されていないと感じました。

なお、英語圏で生活し、子どものバイリンガル教育を成功させている例も多々あります。ポイントは、家庭では常に「日本語」能力の維持発展に努め、英語より日本語の力を一歩先に進めておくことです。

学校でも社会でも使用される英語が、いずれは子どもにとって日常の基本言語になっていきますが、そんな「学習量」では全くかなわない状況でも、家庭教育の質を工夫し、効果的に子どもの日本語力を伸ばしていきます。

おちいりやすいミスは、海外では英語に専念させ、日本語学習をおろそかにしてしまうこと。「英語も大変なのに、日本語まで学習させるのはかわいそう」など、英語と日本語の両方を学ばせるのは子どもの負担になると発想してしまうところに盲点があります。

勉強を「机に座らせる」という固定観念でとらえるべきではありません。外国で疲れた頭をリフレッシュする時間と考え、日本語の本を読ませたり、読み聞かせしたりするのが良いようです。

  • 家庭では日本語を使うとルールを決め、英語を子どもが使ったら言い直させる。
  • 親が日本語使用者の模範となるよう、『あれ、ちゃんとしなさい』ではなく『夕食の時間までに、庭に散らかっている遊び道具を、きちんと片づけておきなさい』と、不用意な代名詞の使用や省略を行わずに論理的に説明する。
  • 子どもが自分から日本語を使わざるを得ない状況を作り出すために、親以外の大人の日本人と日本語で話す機会を多く設定する。例えば日本人客を家に招いて子どもに対応させれば、子どもは自分と共有する情報を持たない人に分かるように日本語で説明しなければならない。これが、子どもの日本語力を鍛える訓練になる。

英語圏にきて間もない日本人の子どもは、強いほうの言語(日本語)で、弱いほうの言語(英語)をどんどん強化していきます。

強い言語を「強固なハシゴ」、弱い言語を「ハシゴにまきついて伸びる草のツル」と表現できるかもしれません。日本でどんどん強化し伸ばしていたハシゴが、英語圏に来たからと言って突然、途切れたらどうなると思いますか?ハシゴに追いつけとばかりに伸びるはずだった草のツルは成長を止め、いつまでもヒョロヒョロと弱いままとなります。さらに、ハシゴも錆びて劣化してきます。

「うちの子は、日本語はできる」「両親が日本人なのに、日本語ができなくなるわけがない」「日本に帰ればすぐに追いつく」「家族間の日本語の会話に問題はないから、大丈夫」などとして手を抜くのはとても危険です。知識レベルでも、英語圏にいる日本の子どもは、初めのうちは強い言語(日本語)の知識が、弱い言語(英語)の知識を引き上げます。

そこで我が家は、移住中の日本語力のケアとして、「日本語」多読法を行うことにしました。みなさんは、英語力を伸ばす方法として多くの支持を得ている「英語多読法」(古川昭夫氏著)をご存知でしょうか。易しい英語の本をたくさん読んで、使える英語を身につける方法のことです。

多読三原則

  1. 辞書を引かずに楽しめる物を読む
  2. わかるところをつなげて読む
  3. 自分が面白いと思う本を選んで読む

我が家ではこれを「日本語多読法」に置き換え、英語圏では我が子に日本語の本を大量に読ませることにしました。私はアマゾンで子ども向けの娯楽本(「忍たま乱太郎」「かいけつゾロリ」「ポケモン」など)や伝記、マンガで解説する学習本、絵本などを100冊買いこみました。

大さん氏(長女)小2のクラス写真
19年9月。小学2年生の長女のクラス写真。社会見学先の水族館内にあるステージで。一番右の前から2番目が長女。日本人は彼女だけ。
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